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大震災に関する論考も、3.11を過ぎるとウソのように潮が引いていきます。
その意味で、もう旬とは言えないでしょうが、今しばらくお付き合いください。

最近、船橋洋一さんの「原発敗戦」という本を読みました。文春新書の新刊ですので読んだ方もいらっしゃるかもしれません。
船橋氏は、朝日新聞の主筆を10年ほど勤めた人物で、国際問題などで多くの業績を残しています。大震災後は民間事故調として、いち早く原発事故の検証を発表しており、事故当時の政権や東電の内幕を描いた「カウントダウンメルトダウン」は13年度の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。
以下に、「原発敗戦」の中で、とても興味深いと感じたポイントを書き出してみます。

①「オプティミズム・バイアス」
人は極限状態に追い込まれると、精神の安定を保つための自動装置が働いてしまうそうです。
ですから「そんな恐ろしいことは起こるはずがない、きっと大丈夫」と考えてしまい、非科学的で根拠の薄い幻想にすがってしまう。ゆえに、さらに状況が深刻化していく。。というものです。
専門家にも起こってしまうこの現象は、危機管理を進めるうえで、大変重要なポイントだと思います。

②「兵站の重要性」
戦争においては、兵站(補給や休養)が最も大切であることは論を待ちません。
原発事故直後、アメリカの全権代表を務める専門家の第一声は「作業員は、十分な睡眠がとれているのか」だったそうです。日本側にとっては、思わぬ第一声だったようです。
この時点でアメリカは、すでに原発事故が長期戦になることを見抜いており、「専門知識を持つ作業員がいかに貴重な存在か」「作業員の持続可能性こそが、事故対応の生命線である」ことをよくよく理解しているわけです。
これに対して東電本店は、当初、福島第一などへの食糧補給をないがしろにしていたそうです。また、作業員が完全防備で作業を進める様子に対して、「自分の身ばかりを守るのか」と罵声を浴びせた市民もいたそうです。(市民感情はわからなくもありませんが)

③「ゼロ戦の功罪」
先の敗戦と原発事故を重ね合わせた論考も書かれています。例えば、日本のゼロ戦は軽くて飛行性能が高く、世界を恐れさせました。しかし、敵の機銃を防御する鉄板をコクピットに着けておらず、戦闘を重ねるたびに、日本の熟練パイロットは傷つき、倒れたそうです。
それに対してアメリカは、パイロットを守る重厚な機体構造を何よりも重視した。これは決してヒューマニズムではありません。「熟練パイロットの存在こそが、勝敗の要諦だ」という合理的な設計思想であり、「勝利に対する真の執念」ともいえるでしょう。

私に限らず多くの日本人は、精神論やヒューマニズムを好み、無意識のレベルでも大きな影響を受けています。しかし、それだけではいけないのです。特にリーダーは。特に危機管理の場面では。

まだ原発事故は終わっていません。その意味は、漏れた放射能の問題だけではありません。
大事故に至ったマネジメントに対する検証は、まだはじまったばかりです。

~ニューカマー~

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